充電ステーションでの運用試験
研究内容
再生可能エネルギーと資源循環型エネルギーを調和させたハイブリッドシステムで走る自動車
2050年でのカーボンニュートラルを実現するために、石油由来の資源から他の地球環境に優しい資源への移行が求められています。再生可能エネルギーは環境負荷低減に寄与するエネルギー源ですが、地域的・時間的な偏在があります。再生可能エネルギーを活用するにはその余剰分などを貯蔵・輸送するためにエネルギーキャリアに変換することが有効です。また、持続可能な社会の実現のためにはエネルギー源やエネルギーキャリアを多様化することが重要であり、地域環境に合わせたエネルギーの創生やエネルギーの地産地消につながると考えられます。
エネルギーキャリアになりうるものは水素を筆頭に多数ありますが、マグネシウムに着目しています。マグネシウムは地殻表層や海水から得られる資源であり、現在は軽量構造材料やアルミニウム合金や鉄鋼材への添加材として利用されています。マグネシウムは再生可能エネルギーや未利用エネルギーによる製錬や、電池の電極として使用した後の化合物から再製錬もできるため、資源循環型のエネルギーキャリアのひとつとして利用できる可能性を持っています。
図1 マグネシウム循環
サスティナブルエンジニアリング研究では、マグネシウムと酸素が反応することによって発電するマグネシウム空気電池に着目して、マグネシウムを資源循環が可能な燃料として利用し、太陽電池を組み合わせることでエネルギーを安定供給することができるハイブリッドシステムを開発しています。このハイブリッドシステムは離島や遠隔地での再生可能エネルギー導入の推進につながり、災害時などに送電網に依らずマグネシウムを燃料にした充電スタンドなどのインフラとしての利用が見込まれます。またこのシステムを車載したハイブリッド・ソーラーカー、次世代モビリティも開発しており、大会への出場や自動車専用試験となどでの実証試験を行っています。
マグネシウム空気電電池・ハイブリッドシステム・エネルギーキャリア
現在のマグネシウム空気電池は一次電池であり、発電が進むとマグネシウム電極が消耗します。この消耗したマグネシウム電極を差し替えることで実質的な充電とするメカニカル充電方式のマグネシウム空気電池システムを開発しています。あわせて耐久性のある空気極の基礎研究、高出力を継続するための電解液処理システムや出力向上システムの開発に取り組んでいます。太陽光発電は受光状態によって大きく出力が変動するため、マグネシウム空気電池で補償することにより安定した電力を出力することができるハイブリッドシステムを開発しています。また、マグネシウム空気電池の発電後の残渣の還元や多用途への応用など、循環利用するための基礎研究を行います。
試作しているメカニカル充電方式マグネシウム空気電池
試作電池の車載状態
試作電池による試験走行
ハイブリッド・ソーラーカー、 次世代モビリティ
太陽電池とマグネシウム空気電池を組み合わせたハイブリッドシステムを搭載した、低消費エネルギーの高性能な実験車両“ハイブリッド・ソーラーカー”を開発しています。車体から電装システムまで全てを開発し、学内施設を利用して製作します。また、ハイブリッドシステムを採用した充電ステーションを構築し、そこからのエネルギー供給により走行するパーソナルモビリティを開発し、公道走行を含めた社会実装を見据えた運用試験を行います。
設計(風洞シミュレーション)
設計途中のレンダリング図
製作作業
車両のシェイクダウン